デザイナーズホテルの差別化はどうはかる?小さな成功の積み重ねが花開くとき(前編)
こんにちは、NBSホテルマネジメントです。「宿泊業界ノウハウの教科書」、5回目は地方のデザイナーズホテルが収益管理と個性的なサービスを出し、利益をあげ続...続きを見る
こんにちは、NBSホテルマネジメントです。
「宿泊業界ノウハウの教科書」の5回目は地方のデザイナーズホテルの例を紹介しています。前半は経費の見直しやスタッフの意識改革について紹介しましたが、後半はどのホテルも悩む閑散期対策や繁忙期との差別化について取り上げます。
-繁忙期と閑散期の差が激しい地域にあるホテルとのことでしたが、それぞれのターゲットはどうされていますか
服部 観光地の特性上、最も宿泊料金が低いのは4月と11月です。しかし、その時期も諦めることなく集客に取り組むべきだと思います。「今の時期は仕方がないんだよ」と何もしないのならば、いっそホテルを閉めればいいと思います。
実は、例に挙げているホテルはターゲットが不明瞭のまま運営されており、ターゲットに対しどのような価値を届けるかという方針も定まっていなかったんです。そのためホテルの魅力が十分に伝わらず、販売戦略も一貫性を欠いていました。
このため、ターゲットの明確化と季節ごとのセグメント戦略に取り組みました。繁忙期は夏と冬ですが、夏は名物の花畑を中心とした自然観光を楽しむ国内の個人旅行者やカップルの旅行者を、冬はスキーを目的とした訪日外国人客を中心ターゲットに設定しました。
日本人旅行者と訪日外国人旅行者それぞれに閑散期や繁忙期があるので、そこも考慮しています。例えば夏は花のシーズンが終わると訪日外国人は来なくなります。一方で日本人は夏休みがあるので需要が高いままなんです。
こうした需要動向に合わせて販売手法も変えました。それまで夏は海外OTAをメインに販売していたのですが、国内OTA経由の販売に力を入れたんです。時期によってターゲットを変え、それに合わせてホテルの販売戦略を変えるのは有効だと思っています。
-閑散期はどのようなターゲットを設定されましたか
服部 春と秋が閑散期ですが、出張やテレワークを想定したビジネス客の取り込みに努めています。「ビジネスホテルでなくてもビジネス客を取り込めるのか」と疑問に思う方もいるかもしれませんが、ビジネストリップの際、ずっとビジネスモードでいたい方もいれば、仕事の雰囲気と離れたカジュアルなホテルでリラックスしたい、という方もいます。このため後者を狙えば良いと考えました。
宿泊料金はハイシーズンと比べると信じられないほど低い料金を出しましたが、無料のラウンジサービスの内容を原価のかからないものにするなど、経費をコントロールすることで収益化を実現させました。ターゲット設定に合わせ、館内の演出やサービス内容を調整したというわけです。
-ターゲットに合わせたサービスとはどんなものですか?
服部 夏と冬の繁忙期はレジャー色を強くし、単価の高い個人旅行者向けにラウンジサービスを強化しました。例えばドリンクサービスでは通常の紅茶、コーヒーに加え、トロピカルドリンクを用意したほか、地元産の花のシロップをかけたかき氷やデトックスウォーターなどをサービスしています。スタッフがレシピを考えた手作り品です。
さらに地元産の果物を使ったジュースや、地元のワイナリーをスポンサーにしたワインのウェルカムドリンクサービスなどもおこなっています。一方で冬は海外のスキーヤーが多いため、海外ではアフタースキーの定番であるホットチョコレートドリンクを提供しています。
繁忙期に宿泊料金が高くなるのは当然ですが、それはお客様にとってはストレスになります。こうしたサービスの強化で、お客様に少しでも料金に納得し、抵抗感を少しでも減らせればと考えました。
こうした取組により、ホテルがお客様それぞれにとって「ちょうどいいホテル」という印象が強まったようで、口コミでの評価やリピート率の向上にもつながっています。
-他のホテルとの差別化にも取り組まれました
服部 運営当初に感じた「個性を感じられないホテル」からの脱却をめざしてさまざまな取り組みを行いました。まずはありきたりなサービスや演出ではお客様の記憶に残らないと思い、「モノを提供するのではなく、コトを提供するホテル」への転換をめざしました。
提供する「コト」については上からのトップダウンではなく、現場のスタッフが自ら提案し、その内容を自由に実行できる環境づくりに取り組みました。このため自分で「これをやればいい」ということはあまり言わないようにしました。「やらされる環境」は嫌なので、スタッフが自らアイデアを考え、気軽にチャレンジしやすいようにしたかったんです。
その一環として、スタッフ1人あたりに実験的な取り組みに使える一定金額の経費を渡し、スタッフが自由に使ってもらえるようにしていました。きわめて緩く挑戦し、上手くいったら次回からはホテルの経費に変更しています。
-面白い取り組みですが、そこからどのようなサービスが生まれたのですか?
服部 サービスとしてはセルフサービスが望ましいと考えてました。人がつきっきりでは限界がくるので、「セルフだけど華やかさがあるようなサービス」を理想としてめざしましたが、スタッフからはさまざまなものが提案されました。
そのひとつが客室でのアロマストーン貸出サービスで、ホテルで人気のサービスになっています。アロマストーンとアロマオイルを購入し、初期費用1万円以下で開始したサービスですが、オイルは地元の名産品を利用するなどこだわりました。宿泊を「記憶に残る香りの体験」として印象付けていると思います。
また、ラウンジではもともとコーヒーを無料でサービスしていましたが、地元メーカーの紅茶を置くようになりました。こちらもスタッフからの提案で、ラウンジサービスが豪華になりました。
さらに、ホテル内にデジタルサイネージを設置し、地元の四季折々の風景を伝えるスライドショーを流しています。チェックインやラウンジでの滞在時に、お客様に地域の魅力を伝える良い機会となっており、「ここにしかない体験」を感じられ、ホテルらしさを出せる取り組みだと思います。
こうした小さいながらも我々のホテルの個性を生かしたサービスの蓄積により、年間稼働率は2019年の49%から2024年には85%まで上昇しました。閑散期の稼働も2019年の24%から2024年は67%となっており、ともに大きくV字回復しました。
-最後に、読者へのメッセージをお願いします
服部 ご説明したサービスはどれも一見地味な成功例ですが、成功はこういう小さなものの積み重ねだと思います。本当に小さなことで当たり前の成功をしているから、当たり前によいホテルになるのだと思います。
小さな成功を積み重ねられる環境を作るのは私たち支配人の仕事です。スタッフには大きな成功でなく小さな成功を積み重ね、そうした君たちの成功があるホテルが成り立っているんだよ、ということを伝えていきたいですね。ひいてはそれがやりがいになり、ステップアップにつながると考えています。
-ありがとうございました
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